フォーム改善事例②
受講者情報
今回受講していただいたのは40代女性のAさんです。
ランニング歴8年、フルマラソン10回以上のベテランランナーさんです。
フルマラソン4時間半という立派な記録をお持ちですが、さらなるステップアップを目指して講習を受講していただきました。
受講前のフォームチェックでは、後ろからの動画で分かる通り、脚の使い方の癖が目につきました。
長年のランニングで身に着いた現状のフォームが改善されるかどうかがポイントと見ていましたが、結果は次の動画の通りです。
フォーム改善事例 動画(後ろから)
歩きのフォームで走っていて、足をサイドから振り出すような走りになっています。
地面のラインを目安に見るとわかりやすいですが、シューズの幅以上に外側から内側へ切り込んで着地しています。
講習前に比べるとかなり改善されました。
講習最後のジョグで、自然に走ってもらった時の動画ですので、まだ癖が少し残っているようです。
足先の動きを意識する必要はありませんので、正しいフォームで練習していれば自然に改善していくと思われます。
講習前の動画と左右の脚の隙間を見比べてみてください。まっすぐ脚を出せていることがわかります。
フォーム改善事例 動画(横から)
歩きのフォームで走ろうとすると、足を前に出したときに脚が伸びた状態になるため、かかとから着地になります。
そうなると膝のクッションをつかって体重を受け止めなくてはなりません。
体の重心の真下に着地できているため、足の真ん中で着地できています。
また着地時に反対の脚を前に出す動作ができています。
着地時に少し膝が曲がって腰が落ちているため、上下動につながっています。
講習で実施した基本動作を復習して、地面を踏むときに膝を曲げてクッションを使わない仕組みを体感しましょう。
指導のポイント

指導するポイントはどういったことなんでしょう?

ポイントはいわゆる「歩き走り(歩きのフォームで走る)」を「走り(ランニング)」に切り替えることです。
「歩き走り」の問題点は、「足に重心が乗っていないため踏み込めないこと」です。
重心は「左右の重心」「前後の重心」の二つの面があります。
一度大きく脚を開いて歩いたり走ったりしてみてください。
普段「歩き走り」をしている方はそんなに違和感なくできると思います。
これは「歩き走り」の悪い点を強調した走り方です。
ではこの時、重心はどうなっているでしょうか。
この走り方では頭や体の位置は左右に揺れず、両足の真ん中にあると思います。
これは右足で着地するときも、左足で着地するときも、重心が頭(体)の真下(右足と左足の間)にある状態です。
ではこの状態で走り幅跳びのように前に大きめに跳躍してみましょう。
おそらく足に力が入らず大きく跳躍できないか、踏み切る足に重心を乗せて(右足踏み切りなら右足の上に身体を引き付けて)跳躍するかになると思います。
一方でランニングの時は左右の足で小さく連続で幅跳びをするようなものですので、右足着地の時は右足に、左足着地の時は左足に、完全に重心が乗っていなくてはなりません。
歩くときは前に出した足のかかとから着地しますので、着地した瞬間の重心は前足のかかとと、後ろ足のつま先に半分ずつの状態(前足と後ろ足の間にある体の真下)です。
これは前足を基準に考えると後傾姿勢になります。
一方でランニングは常に片足(着地足)に重心の真下が来ている状態になる必要があります。
これはアイススケートで前に進むときをイメージするとわかりやすいと思います。
氷の上では普通に歩こうとするとかかとに体重が乗った瞬間に足は前に滑ってしりもちをついてしまうと思います。スケートで前に進むためには着地した瞬間にその足の真上に体が来ていなければいけません。
ランニングの時も着地の一瞬で地面を蹴らなければいけませんので、着地の瞬間に着地足に重心が乗っていなければ力が入りません。

マラソンで自分のポテンシャルを発揮するには、これに早く気付かなければいけません。
電車に乗り遅れそうになってダッシュするとき、普通の大人はこのようなフォームで走れていないと思います。だからスピードの割にすぐ息切れしてしまうのです。

そもそも走るのって、そんなに難しいことでしたっけ?

走るのが難しいというわけではありません。
ゆっくり走るのが難しいんです。

人間の基本動作として「ゆっくりのときは歩く」「速くのときは走る」というのが本能的に備わっているんだと思います。
小さい子供が走っている映像を思い浮かべると、だいたい全力疾走ですよね?
なので「ゆっくり走る」は簡単そうで、実はちょっとしたコツがいるのです。