フルマラソンにチャレンジ(大会当日編)

ランニング知識

はじめに

ここではフルマラソンに初チャレンジする方向けのアドバイスをまとめます。
経験者で自己ベスト更新を目指す方になると少し違ってくる部分もありますのでご留意ください。

大会に向けての数か月間の練習についてはこちらにまとめていますので、合わせてごらんください。

レース直前

大会に臨むにあたってのメンタル

初めての大会の日が近づいてくると、焦ったり緊張したり、テンションが上がったり、人によって様々な感覚を持つと思います。

球技や格闘技の一発勝負の試合と違って、フルマラソンは基本的に練習と同じことをするだけ、緊張する必要はありません。

近くを走っている人は全員同じレベルのランナーですから、仲間がいっぱいいると思ってリラックスして臨みましょう。

またテンションが上がってしまうタイプの方は、前半でオーバーペースにならないようにすることが大切です。10㎞や15㎞は当然想定ペースより速く走れる能力はあるわけですが、そこで競うわけではありません。

フルマラソンの勝負は30㎞を越えてからということを忘れないようにしましょう。

大会前日にすること

準備

多くの大型フルマラソン大会は、ゼッケン等の必要品は事前受付で受け渡し、または郵送です。
前日までにはゼッケンをTシャツに着けたり、計測タグをシューズに取り付けたり、準備をしておきます。

ゼッケンの取り付け場所は指定があったりしますので、指示に従ってしっかりと見えるように取り付けましょう。
リュックを背負ったり、レインジャケットを着る場合は見えなくなってしまう場合があるため注意が必要です。

当日が想定より暑い(寒い)場合や、雨天のケースもありますので、その場合の装備も考えておきましょう。大会の多くは冬場ですので、スタートまでの待ち時間やフィニッシュ後の防寒対策はお忘れないように。特に冬場は手袋は必須です。

用意する物のリストを作っておくことをお勧めします。
次回からそのリストを参考にして修正していけば、自分なりのリストが完成します。

食事

前日の食事についてはあまり深く考える必要はないでしょう。
消化の良いものを適切な時間にしっかりと摂ってください。レース前だからと特殊なことをし過ぎるよりは普段通りの方が良いでしょう。

また翌朝の食事を用意しておく必要もあります。大会当日の朝に慌てないように準備して、ゆっくり睡眠をとってください。

レース前の食事としては「カーボローディング」や、最近では「ファットローディング」などが知られていますが、ここでは重要視しません。

ご興味をお持ちの方は各自調べてみてください。

これらは大会の数日前から糖質(炭水化物)を多くとってエネルギーを蓄えたり、脂肪を蓄えたりする食事方法ですが、行わないとフルマラソン完走が難しいというものでは全然ありません。

私は現在大会前に特別な食事に切り替えたりはしていませんが、フルマラソンもウルトラマラソンも完走はできます。
これらの方法はトップアスリートが練習を100%やり切って、普段の食生活も完璧に管理したうえで、さらなる伸びしろを得るために試すような内容だと思います。

栄養や食事に興味がある方は、まずはこちらをご覧いただき、普段の食生活から組み立てる方が重要だと思います。

大会当日の会場入り

荷物預けとトイレ

会場に到着してから行うことは、トイレを済ませて、荷物を預けることくらいです。

私の場合はスタートの50分~1時間前に会場に着くようにすることが多いですが、ほとんどの場合時間が余ってのんびりする時間があります。

ただ、参加者の多い都市型マラソンなどでは荷物を預けてからスタート地点まで結構距離があったり、スムーズにいかないこともあります。
初めて参加する大会は余裕をもって行動しましょう。

トイレの混み具合は大会によって様々です。空いているな、と思って油断しているとスタート直前になるほど混みあってきますので注意が必要です。

基本的には自宅もしくは駅でトイレを済ませて、大会中に1回はトイレに行くつもりで予定しておきましょう。(慌てないことが大切です。)

会場でトイレに行く場合は、ギリギリを狙わず早めに済ませるようにした方が安心です。

防寒対策

スタート前の簡易な防寒対策として、透明のポリ袋(45Lサイズ)をすっぽりかぶるのをお勧めします。

透明でないとゼッケンが見えないため違反になる可能性があります。

事前にはさみで切って準備してこられる方も多いようですが、私は会場で指で小さめの穴をあけて、そこから頭や腕を出したりしています。

原則としてスタート直前に脱ぎますが、寒い場合は体が温まるまで着たままでも良いでしょう。
ただ風の抵抗が大きく走りにくいとは思いますので、走っている最中の防寒は別で考えましょう。

使い終わったポリ袋はコース途中のゴミ箱に捨てても良いですが、畳んでポケットに入れても重くはありませんし、畳んだものをおなかに(ランパンに挟むように)当てると冷え対策にもなります。

またウェアは薄着で臨まれる方も、手袋は用意しておくことをお勧めします。

外でじっとしていても手が冷えないくらいの気温なら必要はありません。

補給(食事)と給水

食事・補給

レース前の食事

大会当日の朝食はスタートの3時間前に、消化が良くてエネルギーになるものを食べるようにしましょう。

私の場合はだいたい、うどん+おにぎりです。
うどんはコンビニで、手軽に済ませたいときはカップうどんです。
おにぎりは食べきれないときは会場に持って行って食べることも(そのまま食べないことも)あります。

ポイントは食べ慣れないものを、無理に食べないことです。
できれば一度朝から走る時などに試しておくのが良いでしょう。

スタート20~30分前にジェル等で最後の補給をするのが良いといわれています。

私はスタート直前~10分前くらいにジェルを摂取します。スタート直後のエネルギーは十分あることがわかっているので、なるべく後の方に効いてほしいという理由です。(科学的根拠はありません。)

レース中の補給

私の場合は、10㎞ごとに100Kcal程度の小さめのジェルを1つずつ摂取するようにしています。

摂取するタイミング・頻度はご自身で決めればOKです。
ただし、これらの補給は後半30㎞以降にエネルギー切れを防ぐためのものなので、空腹じゃないから摂らないというのは間違いです。しっかり事前にルールを決めておきましょう。

想定タイムが4時間以内の方はこれでほぼ問題ないと思いますが、6~7時間かける場合はちょっと間が空きすぎてしまいますので1時間ごとに摂取するとか、エイドの給食と合わせて補給するなど工夫してみてください。

むしろ後半になると胃が受け付けなくなったりするケースもありますので、元気な時にしっかり摂るようにしましょう。

ジェルではなくエイドの給食を利用するのもよいですが、どのエイドに何があるか把握するのも大変ですし、売り切れになっていたら食べられません。最低でも数個は補給用ジェルを携帯するようにしましょう。

そんなに補給しなくても走れるよ、というご意見もあるかと思います。
科学的には30㎞程度は蓄えているエネルギーで走れるということなので、その後のエネルギーがあればOKです。

ただ、実際にエネルギー切れになってから補給しても遅いですし(時間をかけて回復はすると思いますが)、そもそも疲れなのかエネルギー切れなのか判断も難しいです。

しっかりと前半に補給していれば、「エネルギーは十分ある」という自信につながりますので、個人的には少し多めの補給を推奨しています。

お勧めのジェルなどはこちらを参考にしてください。

給水

大会前の注意点

大会前のウォーターローディングを心掛けましょう。

普段水をあまり飲まないという自覚がある方は、大会の数日前~1週間前くらいは積極的に水を飲むようにしましょう。
ウォーターローディングと言って、体に水分を蓄えた状態を作ることができるといわれています。
(普段から水をよく飲む方は気にしなくて良いでしょう。)

レース中の給水

給水ポイントでは毎回(のどが渇いていなくても)一口は飲むように心がけましょう。

給水はだいたい水とポカリスエットなどの飲料が用意されていますが、冬場の大会では大量発汗することはないと思いますので、水をこまめに摂取する程度で問題はありません。

私は原則として水を、ポカリスエットを飲みたいと思ったらそちらを選びます。

補給ジェルの摂取は、給水の手前で行うのがお勧めです。

補給用ジェルは濃いのでのどが渇きますし、手がベタベタすることもあります。
ゴミも給水所のゴミ箱に捨てられます。

給水ポイントは混みあいますので注意しましょう。

具体的には、事前に給水テーブルがある側に寄って、急に立ち止まったりしないよう徐々にスピードを落としてコップを取るようにしましょう。

スピードを落とさずにコップを取る場合は指をコップにつっこんで、コップの内側・外側でつまんで取ったりする方法もあります。

コップを取った後も基本的には立ち止まらずに飲みます。止まりたい場合は安全なところまで歩きましょう。
走りながら飲みにくい場合は、コップの口をつぶして水の出口を小さくして、ストローのようにして飲むと良いでしょう。

このあたりはポカリスエットでやると指についたりこぼれたりした際にベタベタしますので、ご注意ください。

スタートしてからの走り方

スタート地点

スタートは申告タイム順で、ブロックが区切られているケースがほとんどです。
整列の時間になったら、スタートの10分前くらいまでには、スタートブロックに行きましょう。

最初は多くの方が後方ブロックからのスタートになると思います。

遠慮して後ろに行きすぎず、自分のブロックのなるべく前からスタートしましょう。

例えば1万人の参加者の大会だとして、最後方からスタートして、最終8,000位でゴールするなら、2,000人は追い抜かなければなりません。大規模な大会だとリタイヤする方も多くいますし、前半で歩いてしまう人もいるでしょう。

特にスタート直後は混みあいますから、自分のペースで走れるようになるまでにしばらく時間がかかります。周りの方が速い場合は、まっすぐ自分のペースで走っていれば勝手に抜いていってくれますので、ストレスにはなりません。

なお、これはあくまでも「なるべく」の話なので、スタート時間ギリギリに集合して後ろからスタートになっても慌てないようにしてください。

スタート~最初の3㎞

参加者の多い大会では、号砲が鳴ってからスタートのゲートをくぐるまで数分かかると思います。
号砲が鳴ってからゴールまでの時間をグロスタイム、スタートゲートをくぐってからゴールまでのタイムをネットタイムといいます。
何かに申請するような正式なタイムでない限り、フルマラソンのタイムはネットタイムで把握しましょう。

スタート地点までの数分は焦らず、周りに合わせてゆっくり進みましょう。

※GPSウォッチの計測などもスタートゲートをくぐった時に開始しましょう。

ただし制限時間や関門のタイムは号砲から時間が経過していますので忘れないようにしてください。

スタートから最初の3㎞はウォーミングアップと考えましょう。

1㎞7分で走ろうと思って大会に参加した方なら、最初の3㎞は1㎞8~9分ペースくらいでも構わないというつもりでスタートします。

後方集団のスタート直後は大変混み合います。最初から想定ペースで走ろうとすると、人のあいだをかき分けて、左右に進路変更しながらバンバン抜いていかなければなりません。
ペースを上げたり急ブレーキをかけたり、脚に余計な負担がかかる割に、たいしてタイムは縮まりません。

最初に無駄なダメージを受けると、あとの42㎞ずっと効いてきますので注意が必要です。

一部の参加者がものすごく多い大会を除いて、2㎞くらい進めば人もばらけてきて前が開くようになってきます。そこからが本当のスタートと思って、それまでは大会の雰囲気を楽しんでゆっくり進みましょう。

想定ペースで走りだしたら、同じペースの集団や人に付いて走りましょう。

なるべくフォームのきれいな、リズムの合う人に付くのがお勧めです。
向かい風が強いときも、風よけとして人や集団を利用しましょう。

3㎞~20㎞まで

想定ペースは「だいたい30㎞まではこのペースでいけるかな」という感じで決めますので、20㎞くらいではまだペース通り進めているケースが多いと思います。

この時点で思った通りに進めていない場合は以下の可能性を考えましょう。

向かい風でペースが落ちている
コース形状が前半上り坂になっている

この場合はペースが落ちて当然です。無理に想定ペースに上げず、折り返し等で条件が逆になった時にペースを上げられるように備えておきましょう。
向かい風なのに想定ペースで走っている場合は、オーバーペースということです。

なお、無風の時は走っている速さの風を前から受けている(向かい風を感じる)状態です。
走っている最中に前からの風を感じない場合は追い風ですので間違えないようにしてください。この場合はもちろん折り返したら向かい風になります。

オーバーペースになっている
ペースが安定していない

つい速い人に付いて行ったり、速い集団に合わせてしまうことがあります。
気づいたらすぐに想定ペースに戻しましょう。

周りの集団のペースが落ちて、合わせて自分も落ちている

自分の周囲の人がバテてペースダウンしたら、早めに抜いて別の人や集団につくようにしましょう。
余裕があるのに周りにつられてペースダウンしないよう気を付けてください。

日差しが強く気温が高い・発汗量が増えている
原因はわからないが思ったよりしんどい

この時は要注意です。想定ペースに無理に上げることは可能かもしれませんが、まだ折り返し前です。ここで2㎞や3㎞頑張ったところでどうにもなりません。
不調を感じる場合は早めに想定ペースを下げて、後半もできるだけ走り切れるように温存しましょう。

また明らかに不調を感じるときはいったん立ち止まって休憩したり、救護所に立ち寄ったりして、レースを継続できるか冷静に判断しましょう。

20㎞~30㎞まで

多くの場合は、想定ペースより落ちてきて、きついなと感じていると思いますが、ここまで走ってこれたら完走は目前です。

しかしながらこの時点で余裕があっても、まだまだ油断は禁物です。
基本的にはペースアップは考えず、このまま想定ペースで走り切ることを目標にしましょう。

ゴールまでペースをキープできたら、初マラソンでは120点です。
ペースが落ちても走り切れたら100点満点でしょう。

フルマラソンではよく30㎞の壁といいますが、個人的には30㎞と35㎞に壁があると思っています。

30㎞で調子に乗ってしまうと35㎞の壁でペースが大幅に落ちたり走れなくなってしまったりするケースがあります。走れなくなってからの残り7㎞はものすごく長いので注意してください。

普段走っている距離とはいえ7㎞を1㎞7分ペースなら50分ほど、1㎞10分になると1時間10分くらい走り続けなければなりません。

30㎞~ゴールまで

後半の特に30㎞、35㎞になってくると「とにかく前へ」という気合で足を運ぶことになります。

これはもちろん大切なことですが、「前へ」の意識が強くなりすぎると、フォームを崩して無駄な力が入りがちです。

一歩で大きく前へ進む意識ではなく、小刻みに脚を動かす意識とリラックスを心掛けましょう
(これはフルマラソン通して意識することではあります。ただ前半できていても、後半崩れるのが普通だと思っておきましょう。)

普段息切れしないペースでも、フルマラソン後半は呼吸が苦しくなってきます。
深呼吸=しっかりと息を吐くことを意識してください。

息が上がってくると「ハッ、ハッ」と短い息になりがちです。しっかり息を吐くようにすれば、浅い呼吸の数倍の酸素を取り込めますので、落ち着いてしっかり呼吸しましょう。

最後に

フルマラソンの大会は普段通りただ走るだけですので、リラックスして臨むことが大切です。

ただ、普段の10㎞走と同じつもりで走ると、色々と戸惑うこともあるかと思います。
このページで書いた内容は、フルマラソンに臨むときに私が考えたり、直面する(した経験のある)ことです。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざ通り、1年前のフルマラソンで失敗した内容を忘れて、翌年またやってしまった、といった経験もしょっちゅうです。

ここまでお読みいただいた方は、フルマラソン挑戦の疑似体験ができたと思います。
あとは皆さんが実際に体験・経験して完走し、また翌年走りたいと思っていただけたら嬉しく思います。

準備をしっかりして、大会当日は楽しんでください。

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